700年の歴史を持つ
杉の香漂う湯の街
1335年建武のころ。室町時代(1336-1573)の祖となる足利家の家臣・荒木正高が、戦乱を逃れてたどり着いたのがこの地でした。正高をみちびいたのは、七晩も夢に出てきた薬師如来。お告げの湯につかり、心身の傷を癒やした正高は、仏の恩に報いようと、霊験あらたかな源泉のかたわらに薬師堂を建立したと伝えられます。
薬師堂の参道には杉や松が植えられ、湯の湧くあたり一帯は、いつしか「村杉」の地名で呼ばれるようになりました。薬師堂は今も往時のたたずまいを思わせながら、この地で、たいせつに守られています。
薬師如来が示してくれた湯は、近郷の湯治場としてにぎわい、江戸時代(1603-1868)には新発田藩主・溝口元候、明治時代(1868-1912)には戊辰戦争で傷ついた勤王の志士たちも、村杉へ湯治に訪れたといいます。
大正時代になると新潟医学専門学校(現在の新潟大学医学部)の調査により、温泉にラジウムが多く含まれていることがわかり、婦人病にも効く子宝の湯として一躍、有名になりました。このころの村杉温泉共同浴場は、木造3階の立派な建物。旅館が共同で設立した村杉温泉乗合自動車組合の6人乗りのフォードを走らせての送迎は、ハイカラでめずらしく、大変な人気でした。相馬御風、野口雨情などの文人墨客も村杉に逗留しています。
大正時代の村杉温泉共同浴場は、
一之湯、二之湯に別れ、
貸切の家族風呂もあった。
写真はイメージです
単純放射能泉(ラジウム温泉)とは、「ラドン〈Rn〉を10億分の3キューリー以上含むもの」です。 つまり、ラジウム温泉とは、気体のラドンが規定以上含まれる温泉をいいます。
ラドンはラジウムが崩壊してできる元素で常温では空気より重い気体です。 温泉が地上に湧出後に、気化して空気中に散ります。 ①温泉水中のラジウム→②気化してラドンに→③呼吸で肺に入る→④肺から血液中に→⑤全身の細胞内を刺激します。 ラドンの放射線(α線)は皮膚を通過しにくいため、入浴よりも呼吸によって体内に取り込まれ、肺から血液に溶込み、より早く効果的に全身の細胞に刺激を与えるのです。
ラドンを吸入すると抗酸化機能が高まると言われます。
抗酸化機能とは、老化や生活習慣病の原因と言われる悪玉活性酸素を消去する働きのことで、動脈硬化症などの予防が期待できます。
放射線の電離作用により、マイナスイオンが大量に発生し森林浴をしているのと同じ清々しい気分になり、リフレッシュできます。 これにより自律神経の乱れを改善し更年期障害等にも効果があると言われています。
「ラジウム」と「ラドン」。似ている言葉ですが、なにが違うのでしょうか?
ラジウム温泉(放射能泉)は、ラドン(鉱物など自然のなかに存在する放射能)を含む温泉をいいます。ラドンは常温だと気体となって空気中に飛散します。目には見えませんが、ラドンは村杉温泉の一帯を、やさしくベールにつつむかのように、ふうわりと漂っているはずです。
ラジウムの湯につかりつつ、湯気となっているラドンを吸えば、皮膚と呼吸の双方から有効生成分が、からだに吸収されることになります。そして、有効生成分は血液や組織にはたらき、血液内の老廃物や中性脂肪、コレステロール、過剰な糖分などの生理的代謝作用を促進します。新陳代謝が活発化すると、心身の疲労回復、美肌効果、老化防止、勢力強化などの向上が期待されます。
ラジウム温泉は、温度が低いほど、温泉中に含まれるラドンの含有量が多くなる性質をもっています。全国的にも、効能の高いラジウム温泉は、いずれも温度の低いものばかりです。
「薬師の湯」は源泉温度が25.2℃しかありません。ラドンを豊富に含む新鮮な源泉は加水せず、ゆっくり入浴できる38.0から、一般的な適温とされる42.0℃の間の湯温に加温されています。
【一般的適応症(浴用)】
筋肉若しくは関節の慢性的な痛み又はこわばり(変形性関節症、腰痛症、神経痛、五十肩、打撲、捻挫などの慢性期)
運動麻痺における筋肉のこわばり、冷え性、抹消循環障害、
胃腸機能の低下(胃がもたれる、腸にガスがたまるなど)、
軽症高血圧、耐糖能異常(糖尿病)、軽い高コレステロール血症、
軽い喘息又は肺気腫、痔の痛み、自立神経不安定症、病後回復期ストレスによる諸症状(睡眠障害、うつ状態など)、疲労回復、健康増進
浴用における本温泉特有の適応症
【泉質別適応症】
高尿酸血症(痛風)、関節リウマチ、強直性脊椎炎
源泉名 | 薬師乃湯三号井 |
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湧出地 | 新潟県阿賀野市村杉4593-11 |
泉 質 | 単純弱放射能温泉(ラジウム温泉) |
アルカリ性 | 低張性 低温泉 |
ラドン測定 | 89.9×10-10キューリー/kg 24.7マッヘ/kg |
泉 温 | 源泉 25.3℃ 浴槽 42.0℃ |
湧出量 | 239ℓ/min |
外観 | 無色・透明 |
知的感覚 | 無味・無臭 |
pH | 8.6 |
分析年月日・分析者(登録分析機関)
2021年9月1日 一般社団法人 新潟県環境分析センター(新潟県(登)環企第4号)